日本語教育学の新潮流

留学生のことばの学びとビリーフ変容: タイ人留学生の学習意欲に関する質的研究


シリーズ日本語教育学の新潮流 30
書名留学生のことばの学びとビリーフ変容
タイ人留学生の学習意欲に関する質的研究
編著者滝井未来 著
定価3,960円(税込)
ISBN978-4-86676-053-7
発行日2022年2月28日刊行
その他A5判 上製 304頁

紹介文

本書は、質的研究(M-GTA)の手法を用いて、タイ人留学生のビリーフを探ったものである。タイ人留学生に対するインタビューからは、来日した留学生が日本語を学習する中で、何を学びと捉え、日本社会での生活に活かすのか、また、その中で直面する困難にどのように向き合い、克服していくのかが浮き彫りになっていく。留学生にとって「真に必要な日本語の力」とは何かを問う意欲作。なお、同じM-GTAを使って中国人留学生の実態を解明した中井好男『中国人日本語学習者の学習動機はどのように形成されるのか』(2018年)との比較も面白い。

目次

はじめに
 1 本研究に至るまで
  1.1 筆者の経験
  1.2 研究の開始
  1.3 ビリーフ研究の必要性と研究項目
 2 本書の構成

第1章 これまでの研究の流れ
 1 ビリーフに関する研究
  1.1 海外におけるビリーフ研究
   1.1.1 調査紙BALLI による研究
   1.1.2 学習ストラテジーを用いた研究
   1.1.3 メタ認知知識と言語学習に関する研究
   1.1.4 新たなビリーフの出現を実証した研究
   1.1.5 ビリーフの変容・発展を実証した研究
  1.2 日本語教育におけるビリーフ研究
   1.2.1 ビリーフの内実・本質を調査した研究
   1.2.2 特定のグループ間のビリーフの差異を調査した研究
 2 動機づけに関する研究
  2.1 海外における第二言語教育に関する動機づけ研究
   2.1.1 志向理論を用いた仮説研究
   2.1.2 自律性の促進に関する研究
   2.1.3 教育場面に焦点を当てた研究
   2.1.4 複雑性理論を用いた研究
  2.2 日本語教育における動機づけ研究

第2章 タイ人留学生の教育に関わる社会的背景とビリーフ
 1 タイの教育に関わる社会的背景
  1.1 国による教育施策
  1.2 宗教教育
  1.3 王室との関わり
 2 タイ人日本語学習者に関する先行研究
  2.1 タイ人学習者ビリーフ
  2.2 タイで求められる教師像
  2.3 質的研究法の信頼性と妥当性

第3章 本研究の位置づけ
 1 研究の視点
  1.1 「文化」を巡る議論
  1.2 本研究における「学び」とは
  1.3 主要な用語の定義
   1.3.1 「ビリーフ」の定義
   1.3.2 「動機」「動機づけ」「学習意欲」の定義
 2 研究方法の検討
  2.1 量的研究法と質的研究法
  2.2 研究方法の検討
  2.3 質的研究法の信頼性と妥当性
  2.4 質的研究法の種類

第4章 学習意欲と学習ビリーフ―ビリーフの影響と意欲変化のプロセス
 1 本章の研究目的
 2 研究方法
  2.1 グラウンデッド・セオリー・アプローチの特徴
  2.2 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの特徴
  2.3 分析方法
 3 研究の手続き
  3.1 調査開始にあたり
  3.2 対象となる調査協力者について
  3.3 調査校の概要
  3.4 調査方法
 4 分析結果
  4.1 維持されるビリーフ
   4.1.1 タイでの第二言語教育
   4.1.2 学習姿勢「まじめ」
   4.1.3 教師とは
  4.2 学習初期(開始から3–6カ月頃まで)
   4.2.1 一生懸命すれば大丈夫
  4.3 学習中期
   4.3.1 一見順調
   4.3.2 順調じゃない
  4.4 学習後期
   4.4.1 元気になってきた!
   4.4.2 元気じゃない
  4.5 新たなビリーフ
 5 まとめ

第5章 ビリーフ変容と社会との関わりにおける学びの位置づけ
 1 本章の研究目的
 2 研究方法
  2.1 ライフストーリー研究の特徴
  2.2 分析方法
 3 研究の手続き
  3.1 対象となる調査協力者について
  3.2 調査校の概要
  3.3 調査方法
 4 分析結果
  4.1 研究に対する構え
  4.2 調査協力者たちのライフストーリー
   4.2.1 ウェンの場合
   4.2.2 ユウの場合
   4.2.3 カオの場合
  4.3 ビリーフ変容と学びの形成に関するストーリー
   4.3.1 ウェンの場合
   4.3.2 ユウの場合
   4.3.3 カオの場合
 5 まとめ
  5.1 「コミュニケーションの学び」の困難要因
  5.2 「日本語の学び」の困難要因
  5.3 まとめ

第6章 留学生の「ことばの学び」に必要な視点
 1 各章の振り返り
 2 総合考察
  2.1 文脈的アプローチとビリーフ変容
  2.2 ビリーフ再構築という現象
  2.3 ビリーフ研究の意義
 3 提言
  3.1 コミュニケーション教育の再考
  3.2 「教室」というコミュニティの在り方
  3.3 「対話」を通じた学び
  3.4 「考える力」を養う学び
 4 今後の課題とまとめ

あとがき

添付資料
 添付資料1
 添付資料2―①(日本語版)
 添付資料2―②(英語版)
 添付資料3―①(日本語版)
 添付資料3―②(英語版)
 添付資料4

参考文献
索引

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